Sabishii-Room.

ここに答えはありません。

だけどやっぱり東京に住みたい話。

 東京に住みたい。そう思って何年も経ったけれど、僕は九州の福岡に住んでいる。人生、なかなか上手くいかないものである。

 高校2年生のとき、修学旅行で初めて東京に行った。僕らが泊まっていた浅草ビューホテルからは、当時まだ建設中だった東京スカイツリーが見え、テレビの中の出来事を身近に感じた。東京スカイツリーは、東京を象徴する新しいランドマークであるのと同時に、完成する頃、僕らはどうなっているのだろうかという不安や期待を象徴するものでもあった。日々、大きく変化していく東京という場所で生きるということに憧れを持ったのは、ホテルから建設中の東京スカイツリーが見えたことが大きく影響していると思う。

 修学旅行で東京から宮崎に帰ってきた僕はしばらくの間、何も手につかない状態だった。修学旅行のしおりや、デジカメで切り取った東京を眺めては、ため息が出た。

 高校を卒業して、東京へ就職するクラスメイトたちを羨ましく思いながら、僕は大分県内の大学へ進学した。日々、Facebookに流れてくる東京就職組の日常は、フィルターなしでも十分に魅力的だった。無理をしてでも東京の大学へ行くべきだったという後悔と、僕はいつもこうだなという自己嫌悪は、大学での就職活動に大きく影響した。絶対に東京で就職してやる、という気持ちだけで、エントリーシートも履歴書も、スラスラ書けた。そのおかげか、東京の大手おもちゃメーカーや大手ゼネコンの広告代理店など、様々な大手企業の最終選考まで残ったが、結果は全滅だった。そのうち、選考のたびに東京へ行く旅費や宿泊費も厳しくなってきて、結局、福岡の会社に就職した。そして今も、福岡に住んでいる。

 大学の就職活動で東京に行ったとき、高校のときから仲良しだった友達2人と御徒町の居酒屋で飲んだあと、歩いて東京スカイツリーを目指したことがある。日付は変わっていたし、完全に酔った勢いでの提案だったが、2人は付き合ってくれた。思い出話やくだらない冗談を言いながら辿り着いた東京スカイツリーは、あの頃とは違って完成していた。「ラスボスがいそうだな」曇り空のもと、不気味な佇まいを見せる東京の新しいランドマークに、1人がそう言って、僕らは笑った。そこで僕は、この2人がいないと、東京に住む意味はないなと思った。目紛しく変化して行く街で生きていくには、変わらない何かがなければ、僕は生きていけない気がする。

    僕は今、大学卒業後に就職した会社を辞めて、職業訓練校で広告デザインの勉強をしている。デザインの仕事に就くことと東京に住むこと。この2つが簡単ではないことはわかっているけど、今度は諦めたくない。「東京の街に出て来ました」なんて、言える日を楽しみにしている。

東京

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