Sabishii-Room.

ここに答えはありません。

高校で一晩過ごした話。

 高校のデザイン科には、とにかく変わった人がたくさん集まっていて、どんな人でも受け入れてくれる土壌みたいなものが出来上がっていた。中学で色々と拗らせたまま高校生になってしまった僕も、そんなデザイン科の一人だった。

 高校2年生のとき、文化祭に向けてデザイン科で展示物をつくることになった。話し合いの結果、光と陰を利用したアート作品をつくることになったのだが、どう考えても文化祭まで時間が足りず、学校公認のもと徹夜で制作することになった。放課後、吹き抜けのある広いホールに集まり、複数のグループで作業を行った。作業中、ホール全体の電気は落とされており、僕らを照らすものは、それぞれのグループにある投光器の明かりだけ。投光器の暖色系の明かりは、高校を非日常に演出するのに十分だった。

    数時間経つと、最初は真面目に取り組んでいたクラスメイトたちも次第に集中力が切れはじめた。肝試しを始める人もいれば、椅子で眠っているクラスメイトを起こさないように部屋から運び出し、みんなで囲んで集合写真を撮影したりする人たちもいた。僕はどちらにも参加しないで、ただ遠くから、その様子を眺めていた。

 気がついたら眠っていて、気がついたら朝だった。7月だったから、ホールの床が冷たくて気持ち良かったし、ホールのスピーカーからはH Jungle with tの「GOING GOING HOME」が流れていて、すっかり夏の朝だった。先生たちが用意してくれた菓子パンと飲み物を寝ぼけ眼で選んで、食べた。みんな無言だった。その日も普通に1限目から授業があったことは覚えているけど、ちゃんと受けられたのかは覚えていない。

 高校で一晩過ごすという経験は、今考えても楽しすぎて笑ってしまう。読んで頂いて分かる通り、その一晩に大きな事件は何もなかった。恩田陸さんの小説「夜のピクニック」のようなドラマに溢れたものではなかったけれど、卒業アルバムにも載らない僕らだけの学校行事の思い出は、誰かの作り話のようで愛おしい。それにしても、あれだけ作業を放棄して遊んでいたのに、どのグループも作品が出来上がっていたから不思議だ。

GOING GOING HOME

GOING GOING HOME

夜のピクニック (新潮文庫)

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